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100km歩行と断食 — Fasting Journey in FUJI

Wellness Membershipの会員12人が河口湖で4泊5日、ほとんど何も食べずに100kmを歩く。ファスティングマイスター伊藤圭志が組んだプログラムである。

朝の湖の向こうに、裾野まで姿を見せる富士山

朝の4時半に目を覚まし、5時には歩きはじめる。河口湖のほとり、間近に富士を望みながら、4時間から5時間かけて20kmから25kmの道のりをただ歩く。腹の中にあるのは、朝に飲んだ20ccの酵素ドリンクだけ。日中は水以外なにも口にしない。それを5日間つづけていく。

4泊5日で100kmを歩くファスティングツアー。Wellness Membershipの会員中心に、集まった12人がこの行程を共にした。プログラムを組んだのはファスティングマイスターの伊藤圭志。最上位資格であるプロフェッショナル・ファスティングマイスター1級を持ち、外資系ホテルのファスティングプランを複数監修してきた人物だ。Wellness代表医師の中田航太郎も同行しており、中田自身このプログラムに年1回から2回参加しながら体脂肪率を維持している。

桜と町並みの先に立つ五重塔と、冠雪した富士山

空腹よりきついのはむしろ脚のほうだ。普段ほとんど歩いていない身体に、毎日25kmの距離がじわじわと積もっていく。膝が痛みはじめ、関節がきしむ。100kmの歩行で消費されるカロリーはおよそ7,000kcal——脂肪にして1kg分にすぎない。数字だけを見れば大した減量にはならないのだが、この負荷が突きつけるのは体重の増減とは別の問いだ。自分が普段どれほど歩いていないかを、身体が思い知らされる。歩く習慣のなかった参加者が疲労で膝を押さえている姿そのものが、このプログラムの問いかけになっている。

木立の下で輪になって話す参加者たち

20ccと200回

伊藤のファスティングには明確な設計がある。世の中には酵素ドリンクを一日中こまめに飲みつづける断食もあるが、カロリーが定期的に入ってくる状態ではオートファジー(細胞が自らを浄化し作り直す機構)が十分に発動しない。朝の酵素ドリンクを20ccに絞り、そこから12時間以上にわたって水以外を口にしない時間を確保する。それが伊藤の設けた条件だった。

夜になると、少量の玄米が出てくる。ここにも伊藤が課したルールがあり、野菜は100回、玄米は200回噛まなければ飲み込んではいけない。極限まで空いた腹の前に茶碗一杯の玄米を置かれ、200回数えながら顎を動かしていると、一口ごとに、普段いかに無自覚に食べていたかが浮かんでくる。

赤い器に盛られた玄米と梅干し

規定の距離を歩き終えた午後は自由時間になる。サウナや温泉に入る者もいれば、湖畔に腰を据えてオンライン会議を開く者もいた。

杉木立に囲まれた浅間神社の社殿と石灯籠

頭と胃が空になった夜

空腹のまま一日を歩き終えた夜に、もうひとつのプログラムが待っていた。0歳から現在までの人生の浮き沈みをグラフに描き、それを全員の前で語る時間だ。挫折、家族との別れ、過去のコンプレックス——長い付き合いの友人にも話さないようなことを、参加者たちはここで口にしていた。

「もし半年後に死ぬとしたら、何をするか」を書き出すセッションもあった。スティーブ・ジョブズの晩年の言葉とされる一節が、その場で読み上げられる。

手術室に入る時、病人は、まだ読み終えてない一冊の本があったことに気付く。「人生を健康に過ごすための本」だ。

スティーブ・ジョブズの晩年の言葉とされる

号泣する参加者がいた。頭と胃の中がどちらも空になった状態で自分自身に向き合っていると、ふだんなら閉じたままでいる何かが、そっと開いていく。この時間が、プログラムの核にあるものだった。

陽を透かして咲く枝垂れ桜

切り替えの精度

なぜ断食と歩行を組み合わせるのか。その答えは、食べないことそのものより、食べない時間と食べる時間の「切り替え」にある。

2026年1月、テキサス大学サウスウェスタン医学センターが線虫を用いて行った研究は、断食の効果が断食中の代謝変化そのものにあるのではなく、断食と再摂食のあいだの切り替え(Metabolic Switching)にあることを示している。脂肪酸代謝をオンにし、食事のあとにオフにする。ずっと食べないことでも、だらだら食べつづけることでもなく、このスイッチの精度が寿命に関わるとされている。

伊藤のプログラムは、朝の20ccと12時間の空白で脂肪酸代謝をオンにし、夜の玄米200回咀嚼で再摂食に切り替えるという構成をとっている。スイッチを一日一回、身体に刻むようにして設計されたものだ。

5日目の朝も4時半に起き、最後の距離を歩きはじめる。脚は痛い。腹は空いている。富士はまだそこにある。

富士山を背に並んだ参加者全員の集合写真

【参考文献】
Fasting followed by refeeding can lead to longer lifespan, study shows(UT Southwestern Medical Center, April 2026) https://www.utsouthwestern.edu/newsroom/articles/year-2026/april-fasting-and-refeeding-longer-lifespan.html

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