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Longevity

AIに正解を求めるほど、何を失うのか

「Dr.中田 The Longevity」新シリーズ第4回。AIで効率化を進めるほど、平均から外れたものは見えにくくなる。健診の例も交えながら、自分にとっての答えを問い続ける意味を考える。

会社を伸ばし、資産を築いた先で、何を目標に生きるのか。新シリーズ「Dr.中田 The Longevity」では、お金、健康、生きがいを入り口に、これからの経営者の生き方を考えていく。第4回のテーマは「効率化されるほど切り捨てられるものは何か」だ。

業務の効率化のためにAIを使い、外注できるものは人に任せる。そんな働き方を目指す経営者は多い。ただ、効率化するということは、何かを選び、何かを捨てているということでもある。気づかないうちに失っているものがある、と中田は言う。

AIは「最大公約数」に向かっていく

AIは、使う人たちが求める最適解に向けて更新され、その人たちの価値観や効率のよさに最適化されていく。中田はそれを「最大公約数」と表現した。

平均的に考えればこうだ、という答えに向かい、AIは数の多い側へ寄っていく。一方で世界には、ある箱に収められた書物にしか書かれていない歴史や、秘境に暮らす民族の文化のように、Webに出ていない、つまりAIの世界には存在しないものもある。AIが当たり前になるほど、そこに含まれないものは存在しないもののように扱われる。盲目的に使い続ければ、気づかないうちに自分も最大公約数の側の人間になり、少数派を知らないうちに切り捨てる文化にもつながりかねないと中田は言う。

6本の指は「間違い」なのか

AIで画像を生成すると、人物の指が6本で描かれることがある。話題になった画像にそれを見つけた人は「AIダメじゃん」とコメントを書き込み、AIもまた、指は5本が正しいと修正されていく。

しかし、生まれつき指が6本ある人もいて、その体で生活している。その人にとってはそれが人生であり、それが答えではないと誰が決めたのか。たとえ少数であっても、指が6本であることを間違いと呼ぶなら、それは平均以外の人を切り捨てていることにならないか。問い続けていなければ、標準や平均を絶対の答えと考え、少数派の存在をないもののように扱う人間になってしまう。中田はそれを、すごく恐ろしいことだと語った。

AIの提案は、基本的に無視する

中田自身もAIを使うが、解決したい問いを明確にしたうえで、作業やリサーチの一部を手伝ってもらう使い方に限っている。AIの側から返ってくる「これも必要ですよね」という提案は、基本的に無視しているという。

痒いところに手が届くようで、馬場はつい「それもお願い」と頼んでしまうと話す。けれど、盲目的に頼み続けると、会話は最大公約数の世界へ引き寄せられ、自分の価値観そのものが持っていかれるおそれがある。だからこそ常に問いを立てておく必要があると中田は語った。

Wellness Dr's Officeの対談セットで、身ぶりを交えて話す中田航太郎と耳を傾ける馬場ももこ

平均に合わせた健診が見逃すもの

医療にも同じ構図がある。国や自治体の健診は、集団全体の健康を底上げすることを目的に設計されている。全体を平均的に引き上げる方法としては正しい。

ただ、遺伝的な背景もライフスタイルも、健康のゴールそのものも人によって違う。本来は一人ひとりに合わせる必要があるが、スケールや経済合理性を考えると、平均を前提にした仕組みになっていく。

中田のクライアントに、家族をすい臓がんで亡くしている人がいた。すい臓がんの早期発見には、MRCPと呼ばれる特殊なMRIなどの精密検査が手がかりになる。ただ、若い世代は患者が少ないという前提から、一般的な健診の項目には含まれにくい。その人は家族の背景を踏まえて30代で検査を受け、早期発見につながった。平均を前提にした検査だけなら、見逃されていた可能性もある。

答えは、自分の中にしかない

AIが大好きだという馬場は、自分ももう平均化されているかもしれないと笑った。中田は、だからこそ自分を知ることの重要度が上がっていると言う。会社に最適化されたAIを毎日使っていても、会社のゴールと自分のゴールがずれていれば、自分の人生とは違う方向へ進んでしまう。

深夜に眠れず、AIに相談してみる夜が馬場にはあるという。答えがほしいという気持ちは多くの人にある。それでも、ほとんどのことにおいて答えは結局、自分の中にしかないと中田は言う。スティーブ・ジョブズが禅に傾倒した話を引きながら、人は最後に自分の中へ戻っていくのだと話した。

反対に、何を言っても「その通りだね」と肯定してくれる、寄り添いすぎるAIもある。肯定されすぎるのも、平均に持っていかれすぎるのも違うと中田は言う。

起きたことと、解釈を分ける

AIとの向き合い方として中田がまず挙げるのは、あくまで使っているという感覚を持つことだ。これはAIがやったこと、これは自分の考え、とラベルを貼って分けておかないと、その境界がなくなっていく。

一歩引いて自分に気づくことは、心の健康にも関わる。朝、先輩に挨拶したのに、返事がないまま通り過ぎていった。疲れていて気づかなかったのだと受け取る人もいれば、嫌われているのかもしれないと受け取る人もいる。後者を一日中繰り返し考える反芻は、うつの要因の一つとされると中田は言う。

挨拶をせずに通り過ぎたことだけが事実で、その先はすべて解釈である。事実と解釈、解釈と感情を切り分ける。瞑想の基本にあるこの訓練の重要度が、いま大きく上がっているという。

一人ひとりに最適化する価値

サービスを提供する側も、一般的なサービスだけでは、すぐにコモディティ化する社会が来る。このお客様にとって何が大切なのかを個別に考える価値は、これから大きく上がっていくと中田は考えている。

人の数だけ生き方があり、遺伝情報もライフスタイルもまったく同じ人はいない。AIや周りの人に引っ張られていないか。知らないうちに誰かを排除していないか。自分に最適化された人生とは何かを問い続けなければ、一般に最適化された、つまらない人間になってしまうと中田は話した。

過去のシリーズ

【1】お金と寿命、どちらが先になくなるか

【2】「Don’t Die」は幸せなのか?

【3】経営にはKPIがある。健康には?

Wellness

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