渡邊亮介 — 孫悟空の生き方、ルフィのあり方
17歳で夜行バスに乗り、大阪へ向かった渡邊亮介。28歳で設立した株式会社EST GROUPは、単身者に特化したマンション購入サービス「SMUUL(スムール)」を手がける。人生の指針は、いまも少年ジャンプの主人公だという。

野球とバンド、ふたつの挫折
元々は野球をやっていて、プロ野球選手になりたいと思っていました。小学校6年生でキャプテンだったのですが、身長が145cmしかなくて、中学から硬式野球をやる自信が持てませんでした。足が速くて声が大きいからキャプテンはできても、この先は無理だと。そんな時にたまたま監督と喧嘩をして、辞めるきっかけをもらいました。ちょうど小学校にギターを弾く友達がいて、バンド仲間を探していて、「あいつ元気でいいな」と捕まえられて始めたら、すごくはまってしまいました。当時コピーしていたのがGLAYです。ギターが楽しくなって、小学6年生で次の夢を見つけました。
夏休みは1日10時間くらいギターを弾いていました。当然うまくなって、中学2年生の時にヤマハ主催の「TEENS' MUSIC FESTIVAL」で全国大会まで行きました。一緒にやっていた仲間は、いまはSUPER BEAVERとして、映画『東京リベンジャーズ』や『めざましテレビ』の主題歌を歌うバンドになっています。ただ、僕は1日10時間弾くことは苦ではないのに、曲が流れてきた時に「あ、これGマイナーだな」と分かる絶対音感が全くない。それに気づいたのが高校1年生でした。「俺には無理なんじゃないか」と、小学生の時の「身長が足りない」と同じ壁が来て、練習に熱が入らなくなってバンドを辞め、同時に高校も中退しました。
夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ
バンドはお金がかかるので、とんでもなくバイトをしていて、高2の時点で100万円ほど貯金がありました。ただ、真面目な父親には「偏差値40の高校も卒業できないのか」とひどく怒られて、当時はあまり仲が良くありませんでした。それで新しい何かを見つけようと、夜行バスで大阪に行きました。17歳から20歳までの3年間、向こうでいろいろな仕事をしました。その頃に高橋歩さんの本に出会いました。帯に「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分だ」と書いてあって、「俺のことだ」と。野球は身長を、バンドは才能を言い訳にして、逃げていたのは自分だと気づきました。
高橋さんは飲食店で成功した人だったので、「これなら俺もいける」とバーテンダーを志して、成人式のタイミングで東京に戻りました。渋谷で当時流行っていたラウンジバーに「一度就職させてくれ」と頼み、2年間、店を出す準備をさせてもらいました。そんな時に、お客さんとしていまの妻が店に来ました。「これはもうバーとか言っている場合じゃない、お金を稼ごう」と。夢を追うより結婚したい気持ちが先行して、不動産会社に就職しました。ゴリゴリの営業会社で戸建ての売買仲介をやらせてもらい、メンタルを鍛えられました。
罪悪感から生まれたEST GROUP
3年目で結構稼がせてもらって、妻と「家を買おうか」となった時に、ふたりで一致したのが「タワーマンションに住みたいよね」でした。でも当時の僕は、毎月5棟くらい、お客さんに「絶対マンションより戸建てがいいですよ」と売っていた。25歳でまだピュアだったので、自分はマンションが欲しいと明確になったのに戸建てを売り続けることに、罪悪感のようなものを感じてしまいました。自分が本当に買った方がいいと思えるものを売りたい。そう思って会社を離れ、営業代行の仕事で資金を貯めて、28歳でEST GROUPを作りました。
起業してすごく思うのは、会社は「人と人」だということです。本を読んでインプットして試すことよりも、人と向き合う方が大事ですね。最初は教科書通りに、識学の本を読んで「社員とは飲まない」などいろいろ試しましたが、会社は社長に人が集まっているものなので、自分に嘘をついて経営するのは苦しい。いまはいろいろな本の良いところだけをつまみ食いして、自分らしさを優先するようになってから、経営がすごく楽しくなりました。
素直な若手が活躍する「部活感」
課題は採用ですね。大企業ではないので、入り口の母数をどう増やすか。変な目立ち方はしたくないけれど、営業会社・不動産会社としてはかなり働きやすいつもりなので、それをどう知ってもらうかには日々苦戦しています。うちの営業は平均年齢25〜26歳で、不動産経験者は2割もいません。ほぼ未経験の第二新卒を採用して鍛え上げています。活躍しているのは、素直でいいやつです。若くて独身の、同い年くらいのメンバーが多く、部活みたいに楽しんでくれる。僕自身、高校を中退していて青春不足なので、この部活感が楽しいんですよね。
会社のビジョンは「日本一モテる不動産会社を作る」です。「ふざけているのか」とよく言われますが、創業時にまっとうに考えたビジョンです。モテるの定義は、人に必要とされること、助けること、感謝されること。お客さんに必要とされ、助けて、感謝されて、その対価としてお金をいただく。仲間も一緒だと思っています。自分たちだけが儲かればいいのではなく、まず価値を提供して感謝していただく。そこを大事にしています。
食事をしながら、トラを思い浮かべる
最近、妻と日光に行って座禅をしました。スマホから離れて、紅葉や湖を見ながら散歩もして、すごく幸福度が高かった。普段は会社にいるか家にいるかで、ずっとパソコン、ずっとスマホ、ずっと会話。頭が乱れていたなと思いました。常にながら作業で、ご飯を食べていても仕事のことを考えている。そういうものをあえて止める時間を意識するようになりました。
それから、鈴木祐さんの『最高の体調』という本にある「タイガータスク」をやっています。目を閉じてトラを思い浮かべる。心が乱れていると、トラがすぐ動いてしまうんですね。止まっているトラを眺め続ける訓練で、いまはご飯を一口食べて、噛みながらトラを思い浮かべています。結構、整いますよ。
孫悟空の生き方、ルフィのあり方、父の歩き方
いい人生のために大切にしていることは、大きく3つあります。恥ずかしい話ですが、『週刊少年ジャンプ』から学びました。1つ目は「生き方」。『ドラゴンボール』の孫悟空から来ています。漫画を読んで本気でヒーローになりたいと思い、ヒーローとは何だろうと考えたら、人に必要とされる孫悟空でした。人に必要とされ、助け、感謝される。会社のビジョンの「モテる」は、ここから来ています。2つ目は「あり方」。『ワンピース』のルフィからで、理想を追求し続ける、期待を超える、自分に妥協しない。社員が70点の納品をしてきた時に、指摘せずに「こんなもんか」で済ませたことがありましたが、それは後々複利で効いてきて、70点が60点になっていく。相手にとっても良くないと思い、自分の意思決定に妥協しないと決めています。
3つ目は「歩き方」です。最近、父親と話す機会があって、「お前、何をそんなに早歩きしているんだ。家族もいて、好きな仕事も仲間もいて、もう十分だろう。もっとゆっくり生きろよ」と言われました。確かに満たされている。それでも先を走る先輩も、切磋琢磨できる友達もいて、早く行きたくなる。だから、早く行きたいけれど、ゆっくり歩く。今に満足する意識はすごく大事だなと思っていて、この言葉は本当に父に感謝しています。
渡邊亮介
株式会社EST GROUP 代表取締役社長。アパレルのECサイト運営やバーテンダーなどさまざまな業界を経験したのち、22歳で結婚を機に不動産業界へ飛び込み、過酷な環境のもと戸建ての売買仲介営業を経験。トップセールスへと上り詰めた後、25歳で独立し営業代行会社を立ち上げ。その後、自身が心から勧めることのできる「マンション購入」のサポートに特化すべく、2016年に株式会社EST GROUPを設立。単身者やDINKs世帯に特化したマンション購入支援サービス「SMUUL(スムール)」を展開し「日本一モテる不動産会社をつくる」という独自のビジョンを掲げている
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